niyalistのブログ

東京大学 生産技術研究所でITと公共交通について研究している伊藤昌毅が、日々思うことや研究のことを書きます。

2020年を振り返る

コロナ禍

2020年が終わろうとしていますが、正直なところ今年は、コロナ禍による大きな環境の変化に意識や考え方、習慣や日々の過ごし方など色々なものがついてこれず、戸惑っているうちに1年が終わってしまったような感覚さえあります。

コロナのインパクトは私個人というより私が関わっている公共交通の業界においてとても大きく、多くの事業者の経営基盤を直撃し今も回復の見込みが立っていません。公共交通業界に関わろうとしているとは言え、所詮は他所者である自分が安全圏から何かを言うことにはためらいがあり、それもあって、この一年は自分は裏方に周り、様々な現場の声を届け、必要な議論の場を作ることに徹しようという意識が強くありました。

ITによって、バスを、公共交通を、そして交通全般をより良いものにしていこうという目標は、私にとってはゆるぎのないものです。実際、MaaS、CASE、自動運転などITが成し遂げた技術革新はコロナに関わらず世界の交通を大きく変えつつあります。そこに日本が遅れない、先導していくのだという意識は大切ですが、根本的に移動需要が大きく落ち込み、そのことが公共交通事業者の経営に直結している日本の状況で、目標だけを唱えて現実から乖離してしまったら、然るべきタイミングが来ても何も手を打てないでしょう。

くらしの足をなくさない!緊急フォーラム

私に出来ることをやろうとする中で、多くの方を巻き込んだ動きになったのが、4月と5月にオンラインで開催した「くらしの足をなくさない!緊急フォーラム」でした。全国の多くの交通事業者の方などに登壇いただき、当時まだあまり議論されていなかった公共交通の現場の声を届け、まずは現場の安全のために、そして経営の維持のために支援が必要であること、国や自治体に要望するだけでなく、我々も連携して支援する意思があることなどをアピールしました。議論の内容は国会でも取り上げられ、その後の支援の拡大に多少なりとも貢献できたと自負しています。

zenkokuforum.jimdofree.com

このイベントに私は登壇はしておりませんが、企画やYouTube配信の実現には深く関わっております。4月初めの「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム」の企画ミーティング(本来は10月開催のイベントについて相談していた)でオンラインイベントの開催を提案し、20日程度の準備期間で登壇者を調整し告知も行い、その他諸々の準備を済ませた上で開催に至っています。初めての試みではありましたが、オンラインならではの北海道から沖縄まで全国を(5月の回はオーストリアまで!)繋いだ大規模なイベントとなり、オンラインならではの連携の仕方、メッセージの伝え方を公共交通業界を巻き込んで経験できたと思っています。ITを含め様々な分野を見渡しても、このイベントは比較的早い段階で実現にこぎつけた大規模なオンラインイベントでした。こうした経験を公共交通業界として共に積めたとしたら、私としても大きな喜びです。

技術的にも、Zoomを使ったオンラインイベントのフォーマットをこの開催を通して作ることができました。イベント開催を提案した当初は、実はZoomとYouTubeの連携機能があることさえ知らなかったのですが、準備ミーティングもYouTubeに配信しながら試行錯誤を積み、初めてのオンラインイベントではありましたが、大きなトラブルもなく最初からスムーズに実現できました。もちろん、多くの方にZoomの操作練習などに付き合っていただいたおかげでもあります。イベントの終了後にはZoomによるイベント開催方法をネットの記事にもまとめました。こちらの記事は今もアクセスがあるので、こうした必要とされている方には自分がまとめたノウハウが少しは役に立っているかもしれません。

note.com

オンライン配信をいくつも行なった

くらしの足をなくさない!緊急フォーラム以外でも、いくつかのイベントのオンライン配信をサポートしています。自らが主催者の1人として関わっている公共交通オープンデータ最前線2020公共交通マーケティング研究会 オンラインセミナーくらしの足をみんなで考える全国フォーラム2020の他、UTMobIトークショーJCOMM緊急会議「交通崩壊を防げ」の開催に当たってはノウハウの提供をしております。また12月に広島で開催された「第15回日本モビリティマネジメント会議(JCOMM2020)」においては、オンラインからの登壇や視聴が可能なハイブリッド開催ということで、準備段階の検討から当日のオペレーションまで協力しております。

自分が関わるイベントをオンライン配信するという試みは2010年ごろから始めており、「Web時代のGIS技術勉強会」というイベントを若狭正生さんに協力いただきながらUstreamで配信していたという経験があります。オンラインイベントの緊急開催というのも、2012年に「iOS6マップを語る夕べ -ジオメディアの鉄人が日本珍百景を切る-」という、出たばかりのApple製の地図ソフトの問題を指摘しながらデジタル地図を考えるイベント(企画:児玉哲彦さん)に出演したことがあり、こうしたことが技術的に可能になってから、10年近く経っているという時代感覚がありました。

その後も、スマートフォンの高機能化や4G回線の普及による動画配信の一般化、YouUberの登場による映像機材の高機能化や低価格化などがあり、オンライン会議や動画配信は誰でも使える一般的な技術になってきたいう認識がありました。自分としても、2018年頃から映像収録、配信に必要な機材などを少しずつ買い揃え、自分が関わる場で利用しながらノウハウを身につけていたのですが、そうした経験がこのタイミングで役に立ったと思います。実は今でも、「録音ボタンを押し忘れていた」「設定を間違えたまま録画してしまった」などなど、映像機器を扱うときは失敗だらけです。人より少しだけ多く失敗を経験していていることが、こうした配信の場で役に立っている気がしています。

なぜ自分がこれだけ配信に関わるのだろう、というのは自分でも謎で、もちろん、マニア的な興味や満足感もありますが、「場づくり」というのが抽象的な概念から「オンライン会議や配信向けソフト、機材を適切に選定し運用すること」というのに意味が変わってきたという感覚を持っています。「場づくり」というのは、従来は人と人との関わり方を設計、調整し、創造的な議論やアウトプットが生み出されるような環境を作ること、というような意味だったと思いますが、リアルで人同士が顔を合わせづらい時代において、人と人がストレスなく言葉を交わし、身振り、手振り、メモ書きや写真、絵などを共有するような状態を作って、さらにその熱量が周囲にまで伝わる状況を作るためには、映像技術的なノウハウも必須になります。この辺りに自分の興味や適性を見出している気がします。

「やっぱり実際に会うのが一番」などと言ってしまう方は今もおられますが、世界的なオンラインへのシフトがこれまで参加が不可能だった方、たとえば地方在住だったり子育てや介護中だったり上司の承認を得られないというような方にも機会を切り開き、好きな時にどこにでも行けるモビリティ強者以外にも参加や発言の機会を作っている点は見逃せません。今後は、このような参加者の存在をどれだけ視界に入れながらイベントを企画運営できるかが重要になってくるでしょう。「ハイブリッド」形式のイベントにおいては、今後特にこうした点への配慮が重要になってくるでしょう。(JCOMM2020においては、この点への配慮が全くできていなかった自覚があります)

人を集められないと熱量を高められない

上述した「場づくり」の話に反する話かもしれませんが、新型コロナウィルスの流行以降つくづく思うのが、これまで自分がいかに「人を集めること」に依存してきたかということです。「GTFSの普及」はその典型で、関係者の皆様に1箇所に集まっていただき、また多くの聴衆も集まるという状況の中で、ある種の熱が生み出され、それが伝搬し反響していったわけです。場の価値や緊張感を高めることで、登壇者からより貴重なお話を引き出す、というのは私がイベントの企画に関わるときには常に意識していたことでした。もちろん、多くの関係者が一堂に会することで顔見知りとなり、色々な話が進めやすくなるというのも大きかったです。これまでやってきた方法が通用しなくなった、というのは予想以上に打ちのめされるものがありました。

一方で、オンラインならではの熱量の高め方があるのも確かです。「くらしの足をなくさない!緊急フォーラム」で実現したように、スピードというのは一つの方法です。タイムリーな企画をスピーディーに実施できるというのはオンラインイベントのメリットの一つです。また、交通費などを考えずに色々な方をお呼びできるのもメリットです。まだやったことはないですが、現場からの中継が入ることで臨場感が高まるでしょう(技術的には大変ですが)。

人を集めることはまだ当分難しそうですが、交通やITに関わる社会課題は待ったなしです。なんとか、これまでのイベントを開催するという方法に代わる熱量の高めかたを考えたいところです。

標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)の更なる普及と見えてきた課題

本年も昨年に引き続きGTFS-JPによるオープンデータ整備が進み、12月31日時点では292事業者にもなるそうです。昨年末の時点で170事業者だったので、相変わらずものすごい勢いでデータ整備が広まっていると言えるでしょう。私が関わった中でも、昨年までほとんど検索が役に立たなかった沖縄において、ほぼ完璧にGoogle Mapsで検索ができるようになったのは大きな喜びで、沖縄におけるバス移動が本当に楽になりました。残念ながら今年はあまり各地を回って直接お話を伺うことができなかったのですが、一つ一つのデータに担当者の苦労やドラマが詰まっていることを忘れてはなりません。頃合いを見て、是非データ整備に尽力された色々な人たちの苦労を伺い、努力を讃え合いたいですね。

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一方で今年は、データの更新や品質という問題がクローズアップされた年でもありました。全国の自治体でも、データ整備を当初進めた担当者が交代し、継続の熱量が下がっているという話を伺っています。データ整備を事業者や自治体の業務プロセスに組み込まないといけないですし、また、データからのバス停時刻表の作成など、「業務を楽にするツール」としてのデータ整備を進めなくてはならないと、改めて思うところです。

また、大規模なデータ整備事業の問題点が浮き彫りになった年でもありました。例えば、昨年度の国交省の事業としてコミュニティバスを中心に全国で400近いの地域のデータが作成されたのですが、多くが品質に問題がある上に更新については何も考えられていないものでした。今後これらのデータは果たしてGoogle の審査を通過し、Google Mapsに掲載されるのか?また今後のダイヤ改正の際にデータ更新がなされるのか懸念しております。理解が浅いままデータ整備事業を進めてしまう発注側、問題があることを承知でデータ整備を事業化してしまう受注側の双方に問題があるのですが、このような焼畑農業的な「データ整備事業」はそろそろ終わりにしないといけません。

データ品質が問題になる状況はコロナ禍の中でより顕著でした。急激な利用者の減少に対して多くの交通事業者が運行本数を絞るなど頻繁なダイヤの調整を行っていたのですが、多くの経路検索サービスはコロナ以前のダイヤのままだったり、更新の反映が大幅に遅れるという状況でした。私自身も、「検索で出てきたバスがバス停に行ったら運休だった」という経験をして以来、検索エンジンの信頼性には今まで以上に気を使うようになっていますが、「いちばんあてになるのはバス停に張り出されている時刻表」というのが2020年においても現実のようです。

データの品質は、バスや公共交通の信頼性そのものに直結する問題なので、公共交通業界と検索サービス業界が手を携えて取り組まねばならない問題なのですが、残念ながら現時点では、関係者ごとに認識に差があり、なかなかその機運は高まっていません。それ以前に、自社のデータ品質をしっかり把握できている交通事業者も少ないのが現実です。「田舎のバスは乗る人が少ないのだから、更新が遅れても構わない」と思っている人もいるかもしれませんが、実際には、たまたま出張に来た人が検索結果通りにバスに乗れないと、行動に大きな影響を受けるだけでなく、サービスへの信頼感が大きく低下することになります。

データの問題は、公共交通がネットワークとして機能することを考えると基幹から末端まで完璧であること以外に答えはなく、真にそれを実現するためには交通事業者の業務プロセス自体のデジタル化や交通行政のデジタル化(例えば運輸局への申請のデジタル化)などが不可欠です。データは全ての取り組みの基盤であり、「検索サービスで検索できる」ためだけに整備するものではありません。ぜひ、公共交通においても長期的な視野にたったデータのあり方を考えたいものです。

規制改革推進会議へのインプット

本年は、1月に内閣府規制改革推進会議成長戦略ワーキンググループにて「交通データの標準化・オープン化とその先へ −ITによる交通イノベーションに向けて−」という情報提供をさせていただきました。交通データについては規制改革推進会議でも主要なテーマとして取り上げていただき、7月に発表された答申において「交通分野におけるデータ活用の促進」という項目を明記して頂きました。この中に「g 鉄道やバス等、各交通事業者から国等に提出する申請・届出のデジタル化や機械判読可能なデータの整備について検討を進める。」と書かれているのですが、是非ここは、検討だけでなく実現までこぎ着けたいところです。

www2.slideshare.net

交通政策基本計画の策定

今年は交通政策基本計画小委員会のメンバーに選出頂き、初回の委員会で「IT×交通の時代を考える −交通のインタフェースがITになることのインパクト−」という情報提供をさせて頂きました。この委員会は2021年度からの交通政策の5ヶ年計画を検討する委員会で、このまま進むかと思ったのですが、コロナかを踏まえた大幅な見直しをするということで2月以降検討が一時中断しています。交通の歴史において間違いなく大きな転機となるこの5年を検討する場に加えて頂いているのは、とても有り難いですし責任も重大です。これから再開する議論に貢献できるよう頑張ります。

www2.slideshare.net

技術書典・デブサミなど技術系コミュニティでの発表

昨年から引き続き、ITコミュニティと交通との橋渡しになるような活動を行いました。2月にはDevelopers Summit 2020(デブサミ)にて「ITがモビリティを創る:MaaSに向けた技術とエンジニア像」という発表をし、Web系を中心とするエンジニアの皆様に交通データやGTFSデータの面白さをお伝えしたほか、データを扱うノウハウをまとめたものとして、エンジニアの祭典である技術書典にて「鉄道とバスのデータをハックする2」という同人誌を発表いたしました。自分が、IT分野から公共交通、道路交通など交通に関わるようになった立場として、多くのITエンジニアに交通の面白さ、インフラに関わる面白さを伝えたいと思っています。日本社会の中では、未だなかなか交わらないITと交通ですが、技術の交流、人的な交流の促進をこれからも続けたいと思っています。

www.gtfs.jp

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日本バス情報協会

これまでのGTFSへの取り組みは、コミュニティ主体、ボランティア主体のものでいろいろな方の自発的な取り組みをゆるやかに束ねたものでした。今これを「日本バス情報協会」という形で組織化しようとしています。関係者の皆様にいろいろと相談している段階ではありますが、2021年2月に協会の設立イベント開催を目指して動いておりますので、引き続きご関心を寄せて頂けるとありがたいです。

www.gtfs.jp

自宅環境の整備

3月末にいよいよ大学への出勤も自粛となるだろうとなってから最初に試みたのは、自宅(自室)の環境整備でした。これまでも、家でも仕事ができるようにと部屋や机は確保してあったのですが、がっつり家で仕事をすることは少なく、結果として床にまで本や書類が積み上がり、カメラをオンにしてオンライン会議ができるような状況ではありませんでした。

4月初めに行ったのは、一眼カメラの接続と固定、マイクとマイクスタンドの導入、部屋の大掃除と積み上がった書類、書籍の処分と本棚の整理でした。この後も、スピーカーの購入や窓用エアコンの導入など、環境整備を進めました。処分しにくかった大型のデスクトップPCを捨てるなど、このタイミングがなかったらできなかったと思います。

「いつでもYouTube配信が出来る環境」を目指したのですが、一眼カメラは適度に背景がボケるため仮想背景なしで外に出してもいい感じになったと思います。我が家は、引っ越したときに独自にKDDI光回線を引いた経緯があって回線品質も高いので、安定したネット環境やオンライン会議への参加が必要なときには今も自宅から参加することが多いです。2020年らしい環境が構築できて良かったです。

講演の録画を始めた

2020年は、いろいろなイベントなどに登壇、講演する機会が33回あったようです。前半はMaaSなどについての話題提供、5月以降はコロナと公共交通といった話題が多かったです。GTFSデータ整備事業の基調講演も、青森、岡山、山口で行っており、県によるデータ整備事業の後押しも行っております。今年は、こうした講演を録画し、可能ならば自分のYouTubeチャンネルで配信するという試みも行っています。これは情報発信や共有という意味だけでなく、撮影機材を日頃から使って慣れておくという意味もあります。こうした機材は、実際に使ってはじめて気付く問題やノウハウがけっこうあります。自分の講演、つまりいくらでも失敗が出来る場面で経験を積むことで、いざという時に役立つノウハウを身に付けているという感じです。

YouTube配信をはじめた

こうした取り組みを続けていると、YouTuberらしいコンテンツも作ってみたくなります。9月に佐賀に出張した折に自転車で街を散策しながら撮った動画を編集して、佐賀のまち歩き動画を作ってみました。これは、GoProの手ぶれ補正機能にも助けられて、臨場感のある面白い動画になったとおもいます。このあと、同じような撮影を広島と山口で行っているのですが、まだ編集が出来ておらず、公開できていません。YouTuberになるにはまだ努力が必要なようです。

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動画コンテンツについては、10月に行われた東京大学柏キャンパス一般公開に合わせて所属している大口研究室のYouTubeチャンネルを開設し、研究に関わる情報発信をはじめました。大口教授がNEAR SIDEの信号とFAR SIDEの信号について語る動画や、柏キャンパスにある実験用の信号機について紹介する短い動画を作ったほか、信号マニアの学生がひたすら信号について語り尽くすライブ配信も行いました。カメラを4台用意した本格的な配信だったのですが、自分は聞き役とカメラのスイッチだけに徹している「誰かを主役にする仕事」という感じで、その意味でもとても楽しい試みでした。

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欅坂46の終焉

2020年の話題としてはこれを上げないわけには行きません。2017年以来追いかけ続けていた、欅坂46が、ついにその活動を終えることになりました。2019年2月の「黒い羊」リリース以降新曲を発表できず、今年の初めに、結成以来センターを務めてきた平手友梨奈さんの脱退がアナウンスされ、活動の停滞感が疑いようも無くなった状況での決断はやむを得なかったと言えるでしょう。グループはその後櫻坂46として再出発していきますが、私にとっては、平手さんという1人の天才を中心とした集団のあり方としても興味深く、考えさせられるものでした。夏に公開された映画でも語られていたように、グループの中でも平手さんの存在は突出しており、その1人のパフォーマンスを魅せるための集団、というようにもなっていきます。一方でその状況は平手さんにもグループの他のメンバーにも大きな負担であり、平手さんも、怪我や映画撮影などによるグループ活動からの離脱を重ねながら、最終的に脱退にまで至るのです。

youtu.be

私たちの社会も、今は平均的な教育を受けた平均的な人が支えるものだけではなく、その時々に世界のどこかに現れる突出した天才が作る魅力的で刺激的なビジョンや事業に引っ張られながら、急速にその歩みを早めるものになってきています。例えばスティーブ・ジョブズイーロン・マスク、オードリー・タンなどの活躍を思い浮かべれば、彼/彼女なしではある分野において世界は数年以上遅れていたと言うことが出来るでしょう。つまり、突出した才能・天才というものを社会がどう受け止め、その活躍を社会そのものの進歩に繋げられるかが重要になっています。

平手さんの脱退は、天才を受け入れ、受け止め、同じ時間を過ごすことの難しさをあらためて感じさせたものでした。一方で、残された人たちも決して平手さんを拒絶していたわけではなく、大きな刺激を受け、絶望を乗り越えながら自身を変化、成長させ、今に至っているわけです。改名以降の活動はあまり追っておりませんが、その経験はこれからの活動にも大きな影響を与えることになるでしょう。

私はこれまで何度か、身近に突出した能力の持ち主がいるという状況を経験しており、その点からも周りのメンバーと平手さんとの関係性をいろいろと想像し考えてしまいます。そして自分としては、「天才を受け止め、その活躍を社会そのものの進歩に繋げる」仕事こそが自分の仕事だろうと思うわけです。

今後について

2021年以降の仕事はまだ明確になっていません。とりあえず3月までは今の大口研究室に所属する予定です。ただ、今年の仕事を振り返りながら「オンライン会議や配信向けソフト、機材を適切に選定し運用しながら場作りをする」「リアルのイベントを開催するという方法に代わる熱量の高めかたを考える」「誰かを主役にする」「天才を受け止め、その活躍を社会そのものの進歩に繋げる」といった今後の仕事の方向性になりそうなキーワードを見出すことが出来ました。私が関わっている公共交通や道路交通などの交通の世界で、そしてより広くITと社会という文脈の中でも、来年もこうした観点からの仕事が出来ればと思っております。本年はあまり多くの人とリアルに顔を合わせられなかったですが、この特異な2020年という同じ時間を経験したというだけでも、より繋がりは深くなったと信じています。どうか2021年以降も、一緒に、よりよい社会を目指して仕事が出来ればと思っております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。