沖縄の交通を「見える、使える」へ! :Okinawa Open Data Challenge 2021 に参加した
2021年11月に沖縄県宜野湾市で開催された、Okinawa Open Data Challenge 2021というイベントに参加しました。これは、主に公共交通のデータの活用、可視化を行おう!というイベントで、ハッカソンともアイデアソンとも違う、でも参加者の多くがプログラミングやGISなどを駆使して公共交通のデータに触れるというこれまでなかった形のイベントになったと思うので、ここに記録を残します。
イベント概要
プレイベント
- 日時: 2021年11月6日(土) 13:30〜17:00
- 場所: 宜野湾ベイサイド情報センター
- 参加人数: 15名
メインイベント
- 日時: 2021年11月18日(木)9:00〜17:00
- 日時: 2021年11月19日(金)9:00〜17:00
- 場所: 沖縄コンベンションセンター
- 参加人数: 16名
- ResorTech EXPO 2021 in Okinawa の一環として実施
開催の背景
沖縄県では、2018年度より観光2次交通機能強化事業として県内の公共交通(主にバスや船舶)のデータ整備を進めており、2020年初頭までに一部の主要バス事業者を除くほぼ全てのデータ整備が完了、Google Mapsなどへの掲載を実現しているほか、OTTOPというサイトを通してGTFS形式のオープンデータとして公開しています。これは、沖縄県から受託した沖縄オープンラボラトリが地域の公共交通事業者とともに運営しているもので、現在はアプリの開発などにも用いられているほか、コロナ禍で頻繁に減便が行われていた折にも、それに追従した情報発信を続けるなど、高い品質のデータを公開しています。
なお、私もこの観光2次交通機能強化事業には当初から関わっており、オープンデータ整備の意義などをお伝えしたほか、定例の委員会にも座長として参加しております。
開催にあたって考えていたこと
今回のイベントに関して、主催者からは、「公共交通データのビジュアライゼーションをテーマにするハッカソンを開催したい」という相談を頂いておりました。アプリ作りをゴールとするハッカソンと比べ、データの可視化はよりデータそのものからの気付きや学びがより多くあるはずで、いい試みだと感じましたが、その反面、技術的な難易度は意外と高く、参加者が満足する体験が出来るか不安を感じておりました。少し突っ込んでデータを処理しようとすると、技術的な難易度は一気に高まりますが、私自身がどこまでサポート出来るかも確証がありません。また、やりたいことが少し違うだけでツール選定や必要な技術なども異なってきます。主催者側は「人を集めてデータを渡せば何かは出来るだろう」という感覚だったと思うのですが、私自身は、丁寧に事前準備を行わないと、イベントが成り立たないだろうという懸念を伝えておりました。
プレイベント (11月6日)
チームビルディングとテーマを議論するプレイベントが、11月6日に開催されました。この日は、公共交通のデータ可視化に関して「夢を広げる話、オープンデータの大切さの話」をして欲しいというリクエストを受けておりました。
ということで、「データビジュアライゼーションをきっかけに沖縄の交通の「次の一手」を考えよう」という題で話をしてみました。実は私自身、データ分析を中心テーマで話をすることはほぼ初めてです。日頃講演のスライドは過去のスライドを活用することも多いのですが、今回はほぼ書き下ろしのスライドになりました。
発表資料はこちら。
www.slideshare.net
講演では、データ→インフォメーション→インテリジェンスというデータ分析の一般的な枠組みを踏まえながらデータ分析入門のような話をしたのですが、途中、沖縄の交通データを可視化した地図を実際に見せるなどしたので、公共交通データの具体的な姿や可能性についてもイメージを持って頂けたと思います。データを見せるなどしてたため、当初の講演時間をだいぶ越えてしまって申し訳なかったです。
このあと、各自でテーマを考え、最終的に「学生」「生活」「観光」という、各6-8人程度の3チームに分かれてディスカッションを進めました。地元の学生や企業、行政などで公共交通に関わっている方々、東京から来た交通データや地図データなどに関わる方々などの混成チームです。データを使って何を知りたいか、何をやりたいか、各チームごと活発な議論がありました。
最後にチームごとに取り組むテーマを発表してこの日は終了。私と、 Code for Kanazawaの福島健一郎さんから、各チームにコメントをさせて頂きました。
ワークショップ(メイン)(11月18日-19日)
本番となるワークショップは2日連続開催です。前回とほぼ同じメンバーが集まり、各チームが簡単にテーマ発表を行うと、あとは黙々と作業開始です。
学生チーム
「学生」チームは琉球大学の学生が中心となって大学周辺の公共交通について考えるチームです。大学周辺のバスの使いにくさを可視化したいということだったので、それならばある地点間の検索を少しずつ条件を変えて行って、所要時間をグラフ化してみるといい、とアドバイスしてみました。今、Google Mapsに沖縄のほぼ全ての路線バスデータが掲載されているので、こんな使い方も出来るわけです。
ということで、大学から程近くの大規模なイオンへの所要時間を10分刻みでグラフ化したのがこれ。タイミングが良ければ20分から30分弱で直接行けるのに、多くの時間帯では近くのバス停が使えず、所要時間も50分前後掛かってしまうことが分かります。
このチームは、その後QGISというソフトを使って更に大学周辺の公共交通の実態を探っていくことになります。
生活チーム
「生活」チームは、公共交通と自家用車のバランスのいい利用を目指すために、パークアンドライドというテーマに取り組んでいました。Webから駐車場データを用意し、バス停の位置情報と距離に基づいて紐付けることで、「車を駐めてバスやモノレールに乗る」ことが実用的に出来るバス停を探し出します。このチームは技術的な挑戦にも積極的で、Webスクレイピング、Excelによるデータ処理、JavaScriptによるデータ処理、kepler.gl を用いたデータの可視化なども行っていました。
観光チーム
「観光」チームは、「公共交通を利用することで、実はホテルや市街地から離れた飲食店も利用出来るのではないか」という仮説に基づき、観光客の行動範囲を拡げる提案に取り組んでいました。このチームでは、沖縄の主要なホテルや飲食店街のデータとともに、QGISのGTFS-Goというプラグインで「午後8時以降のバス路線と本数」を可視化し、どのような行動が可能になるのか、どのような提案をするかを議論していました。
会場の様子など
会場となった沖縄コンベンションセンターは、宜野湾市の海岸沿いにあるいくつもの建物が連なる大規模な展示施設です。今回は、リゾート+テックでリゾテックというテーマを掲げ(この用語が一般に定着しているかは知りません)、コロナ後の観光を見据えた、オンラインオフライン併用のイベントを開催しているようでした。
昼食時には、会場に何台ものキッチンカーが並び、何を食べるかを選ぶのも楽しい体験でした。
私も、リゾテックエキスポの参加者向けに「サービス化に向けて進化する公共交通と沖縄のポテンシャル」という講演を行いました。こちらは、MaaSやオープンデータなどの一般的な話や、OTTOPによるデータ整備など沖縄の現状を紹介する、一般向けの講演です。アーカイブ配信を行っているので、12月12日までならリンク先から講演を聴けるようです。
www.slideshare.net
発表会
2日目15時過ぎからは、各チームの成果の発表会です。机を並び替えて、全員が顔を向き合えるように(そして、私と福島さんは囲まれる形に)なりました。
学生チーム
学生チームは、「琉球大学周辺にどのくらいバスが通っているのか」、そして果たしてバスを使って大学に通えるのかをデータ分析を通して調査し発表しました。
国勢調査の結果から若者が多いエリアを探しそこから大学へのアクセスを調査すると、多くの場所で十分なバスの便数がなく、バスで大学に通うのは現実的ではありませんでした。この発表資料の図は、QGISと国勢調査のデータ、路線バスのGTFSデータを組み合わせて作図しています。
また、近隣の商業施設にもバスでは行きにくいなど、バス利用者には不便な状況が明らかになりました。琉球大学では今学生向けの駐車場の有料化などが検討されているようですが、こうした分析から、単に学生の自動車利用を抑制するだけでなく、バス会社も巻き込んだ交通改善プロジェクトが必要であるという状況をあぶり出しました。
観光チーム
公共交通を利用することで、市街地から離れた飲食店の利用を活性化することを目指していた観光チームでは、最終的な成果を「沖縄飲み屋街 終バスマップ」という形にまとめました。
例として、那覇バスターミナルに戻ってくるための終バスはこの図のようになります。鉄道がない沖縄では、各地のバスターミナルを繋ぐ形で幹線路線が走っているのですが、その路線上に位置する場合ならば、比較的遅い時間でも那覇に戻ることが可能です。例えば沖縄市には夜10時近くまでいられるのですが、名護や恩納村は20時頃が最終となります。この他にも、恩納村のホテルに宿泊している観光客向けの終バスマップなども作成しています。
このチームでは、もう一つぎのわんヒルズ通りという飲み屋街からの終バスマップも作成しています。下図のように、21:00に出発すれば比較的多方面に帰宅可能なのですが、30分遅くなると帰宅出来る方面が限定され、22:30になるともうバスに乗れなくなります。
このチームは、地域ごとの終バスという分析結果をどのような形でまとめるのが良いか試行錯誤していた印象があります。最終的に観光客に対するガイド、という形になりましたが、この他にも店舗を出店する経営者向けの資料、という議論もありました。行政やバス事業者に対する提案という形もあり得たでしょう。最終的な「終バスマップ」は、提案が明確に伝わる、いい形になったと思います。
個人的には、「鉄道がない」という状況から想像していたよりは終バスが早く、夜遅くまで比較的自由に移動出来る大都市の生活とはかなり違った移動をせざるを得ない、という実状を痛感しました。「飲み屋から帰る」という具体的なシナリオを設定すると、時刻表データが急に意味のあるものに見えてきて、色々な解釈が可能になるというのも面白い感覚でした。
生活チーム
パークアンドライドの利用促進を目指していた生活チームでは、最終的なアプリケーションのイメージをAdobe XDを使ったモックアップとして提案するとともに、keplerにバス停、民間の駐車場、公共施設や商業施設の駐車場などを可視化しました。地図の縦棒が駐車場の位置とその容量を表しています。駐車場については、データが少ないためWebスクレイピングなどを行っていましたが、本当は知りたい空き状況などのデータは公開されていないためデータを得るのに苦労していました。
このチームはまた、イベントの会場となった宜野湾市から沖縄県庁を往復する場合の時間と費用のシミュレーションを行いました。沖縄県庁は那覇市の繁華街にあり、買物や観光など様々な時間を過ごせます。そこに3時間滞在する場合に、一番早いのは自動車、一番安いのは自転車なのですが、これらを組み合わせて、自動車やタクシーでゆいレールの駅に行きそこでモノレールに乗り換える場合など、様々な想定で必要な時間を算出しています。
ここでの意外な結果として、3時間分の県庁での駐車料金などを加味しても、自家用車+バスの組み合わせより自家用車だけで行ってしまった方が安く早いということなどが挙げられていました。
このチームが目指していた、パークアンドライドによる移動の最適化を実現するには、まだまだデータが足りず、また自家用車と公共交通を組み合わせた経路探索は技術的にもまだ難易度が高いということで、パークアンドライドの促進がまだ容易ではないことを実感しました。
福島さんからは、タクシー運転手から聞いた話として「沖縄のお年寄りはバス停までタクシーで向かい、そこからバスに乗ることがある」という事例を紹介されていましたが、データ分析に頼らなくても、ひとりひとりが工夫してバスやタクシーなどを使いこなしているのも確かです。
数年前に延伸したゆいレールの新しい終点、てだこ浦西駅は、周囲に市街地などがなく、巨大な駐車場を併設することでパークアンドライドの利用を狙っているように思えたのですが、実際、沖縄のどのエリアの人やどのような種類の移動に便利な施設となっているのでしょうか。個人的にも調査してみたくなりました。
データを見ながらざわざわする会
各チームの発表が終わったあとに「データを見ながらざわざわする会」という時間がとられました。これは、各チームが使っているGISなどのデータを見て「ここの地図を拡大してみたい」「このデータを重ねられないか」など興味をぶつけ、より深くデータや地域を理解する時間です。地域の事情に詳しい参加者から質問が飛びだし、それに答えているうちにすぐに時間が過ぎていきました。
例えばこちらの図は観光チームが使っていた午後8時以降の運行頻度図です。夜にバスがどれだけ走っているかが直感的に理解出来ます。こんな図が GTFSと GTFS-Go を使うことで簡単に作図出来るのです。
私も、このイベント期間の中で自分が行っていた取り組みを紹介しました。OpenTripPlannerと呼ばれる、GTFS形式の公共交通データを使ったオープンソースの経路探索システムがあります。これを稼働させ、琉球大学から沖縄県内の無数の地点に向けて経路探索を行う、というプログラムを空いてる時間やホテルなどで作成していたのでした。「学生」チームは限られた場所へのアクセシビリティをGoogle Maps検索で調査していたのですが、これを総当たりで行おうという考えです。
中央にある琉球大学から、那覇市や沖縄市、名護市など県内全体に網羅的に検索を行い、必要な移動時間、待ち時間、乗り換え回数などを調べています。直行で行ける場所もあれば、乗換が必要なところも多く、大学が所在する西原町の中心部への移動には3本のバスを乗り継ぐ必要がある(多分歩いた方が早い)ことも分かります。
ここまでで2日間のワークショップは終了。最後にひとりひとりが気付きや学びなどをコメントし、記念撮影を行って、無事2日間の日程が終わりました。
感想やまとめ
正直、最初はこのイベントはうまく行かないだろうと思っていました。やりたいことを実現するためにはいくつものデータやツール、技術が必要で、時間も掛かります。時間内に達成感が得られるところまで到達するのは困難だろうと思っていました。今回の何が良かったのか、どうしたら他の地域にも展開出来るのかなどを、いろいろと考えています。
「データを見ながらざわざわする会」がとてもよかった
そう。そもそも、みんなでデータに向き合いながらああでもない、こうでもない、と意見を出し合い、一緒に何かを考える場、こういうのをやりたかったんです。ただそれを実現するためには、地域やデータに対する一定の共通理解が必要だし、データそのものを自在に扱う技術も必要。2日間のワークショップを経て、それぞれのやり方でデータに向き合い格闘した経験を積んだからこそ、これが出来たのだと思います。ファシリテーターの石垣綾音さんが的確な質問を繰り出すのも良かったです。
QGISは意外と誰でも使えるんだ
QGISはオープンソースのGISソフトであり、誰でも無料でダウンロードして使い始めることが出来ます。機能も豊富で空間的なデータ分析には十分すぎるほどであり、使いこなせば便利なのですが、GISという概念自体がそれほど一般的ではなく、始まる前はQGISのレクチャーだけで時間が過ぎてしまうのでは、と心配をしていました。
しかし実際には、各チームに経験者がいたり、YouTubeなどにわかりやすい説明が載っているなどで、きっかけさえあれば思ったより簡単に使い始められるようでした。QGISに関しては、今回のイベントの中でインストールした人が10名近くいたかと思います。
背景地図の設定、国勢調査データの読み込みなどもいちいち大変(特に国勢調査データ読み込みはバッドノウハウが多すぎるので自分でも忘れないようにドキュメント化している)んですが、しっかり乗り越えたり、ラボの又吉さんがさりげなくGeoJson形式のデータを事前に用意していたりなどでだいぶ助けて頂きました。
GTFS-GOありがとう!
今回のイベント成功の陰の立て役者は、GTFSをQGISに読み込むプラグイン「GTFS-GO」でした。北海道でオープンソースGISなどを扱っているMIERUNEが開発し、2020年末に公開され、その後、(株)トラフィックブレインなどの貢献により運行頻度図の作図機能などが強化されたことで、GTFSをGIS上で扱う最強のツールになったと思います。このツールのおかげで、GTFSを「データ」として活用する、という話にリアリティが出てきました。今回のイベントに間に合って、ほんとによかったと思います。
データを扱う本職でも、データの作成から活用をトータルで体験する機会は少ない
終了時のコメント発表では、「これまでも経路探索の企業でデータを扱っていたが、こんなに皆が経路探索が好きだとは思わなかった」「これまで自分は分析結果だけを発注する立場だったが、今回の体験を通して見方が変わった」というようなコメントがありました。
今回の参加者には、公共交通や観光データの作成や処理などに関わる専門家が何人もいらっしゃいました。しかし、今回のように自ら決めたテーマに基づいてデータを集めたり作成し、可視化や分析ツールを自分で選び、仮説を立てて分析を行い、その結果をまとめて発表する、というようなトータルでの体験をされていた方は少なかったのかも知れません。
沖縄で、また東京で実務を担っている方がしっかり2日間参加するのは、職場での調整なども大変だったかもしれません。しかし、そういう方だからこそ、今回のような経験が直接日々の業務を考え直したり、より理解を深めるきっかけになったかな、とも期待しております。発注者、受注者、ライバル企業などの壁を越えてチームを作れたのも良かったですね。
集計データではなく個々のデータだから、ひとりひとりが利用する状況と全体の両方に目配せ出来る
データ分析の醍醐味でもあり難しさでもあるのが、特定の個人の特定の状況を考える虫の目と、エリア全体を俯瞰的に捉える鳥の目を行ったり来たりしながら仮説を立て、検証するところだと思います。俯瞰で捉えながら違和感を発見し、個別の事象にしっかり迫ることが出来ればいいのですが、実際は中々難しいのです。
GTFSデータの良い点のひとつは、それが集計データではなくあくまで具体的な時刻のデータであるからこそ、ひとりひとりの状況(例えば、終バスを気にしながら飲んでいる人)にフォーカスしてデータを解釈出来る点です。これが、単にバス停の位置と運行本数のような集計データだけでは、ここまで具体的な想像は出来ません。
GTFSデータを用いたことで、このような寄りと引きの自在な切り替えを、多くの参加者が自然に実現出来ていたと思います。
地元の人が活躍していたのはすばらしかった
今回のイベントの立役者と言えば、ラボの又吉さんでありファシリテーターを務めた石垣綾音さんでしょう。それぞれ、沖縄にルーツや拠点を持ち、地域をしっかりと引き受ける覚悟を持ちながら、風通しの良さと確かな技術力を持った方々です。困ったことがあると、だいたい又吉さんが登場して、事前に用意していたデータや仕組みが出てくる様子は感動的でした。石垣さんには、ファシリテーターを務めながら参加者としても「学生」チームに入ってデータ分析などを牽引され、頼もしさを感じていました。
また、県庁や市役所で観光などの実務に携わっている方、地元のコンサル事業者など地域の土木や交通を担う専門家が何人も参加されていたのはとても素晴らしい光景でした。地方なので、どうしても人が限られ、同じ顔ぶれが同じような関係で仕事をすることがずっと続く、という事が起こりがちです。こうした業務からちょっと離れた場で「発注者」「受注者」という関係を外して一緒のチームになって、業務の枠がない課題に対して実力を発揮し合えたのは、とても良かったと思います。
地域を担っている方から「東京ではどう考えられているんだ」「他地域にはどういう事例があるんだ」というような質問がほとんど出てこないのもいいですね。公共交通オープンデータの整備や活用はまだ始まったばかりなので、地域の実情を踏まえながら、それぞれの地域でベストなやり方を探るしかないのです。自分のものとして引き受け、自分で考えることが当たり前になっている感じがあります。
他の地域でもやってみたい
終わってみて、難しいと思っていたイベントが形になったことで、私としても、是非ほかの地域でもこのようなイベントを実現したいと考えるようになりました。今回のイベントは「ハッカソン」に近い気がしますが、アプリ開発やプログラミングに主眼を置かず、データの可視化や分析にフォーカスしたというところがこれまでになかったと思います。一体何と呼べばいいのでしょうか。
今回の沖縄の例では、地域や交通に問題意識を持っていたり、データに関する経験やスキルを持っている人が集まることで、チーム内でも教え合い、学び合いが発生し、各チームそれぞれがデータ分析やデータ可視化などに取り組めたと思います。もちろん、ラボの又吉さんはじめスタッフの強力な支援もとても重要でした。
今後他の地域でも展開するとしたら、どのように企画し、どのような方に協力をお願いするのがいいのでしょうか。GTFSのような最近になって登場した公共交通データについては、正直、まだ使いこなせる人材は多くないというのが実状だと思っています。そのような状況を乗り越え、多くの参加者に実りのあるイベントを実現する秘訣を、もう少し探りたいと思っています。