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niyalistのブログ

東京大学 生産技術研究所でITと公共交通について研究している伊藤昌毅が、日々思うことや研究のことを書きます。

(翻訳)公共交通データは誰のものか?

本記事は、CityLabに掲載されたDavid Zipper氏による「Who Owns Transit Data?」と題した記事を、著者の了承を得て翻訳したものです。公共交通オープンデータのアメリカとドイツの比較から、その推進の重要性を説いています。

補足としては、近年はドイツ鉄道(DB)もオープンデータ推進に力を入れはじめており、Webページを開設しています。駅や路線情報、長距離列車の時刻データなども公開されています。このAPIはGTFS形式ではないため、GTFSへ変換するツールが有志によって公開されています。珍しいものとしては、駅のエレベータやエスカレータの動作状態を取得するAPIもあります。

www.citylab.com


アメリカではほとんどの都市が公共交通データを完全に公開し、経路検索サービスや乗客数の増加に貢献している。一方、ドイツではほとんどの都市が公共交通データを公開していない。ドイツもアメリカにならうべきか?

2017年4月9日
著者: David Zipper
翻訳: 孕石直子

ダイムラーとポルシェのふるさと、ドイツのシュトゥットガルトは、強力な自動車文化の都市である。そして当然そこには深刻な大気汚染問題も存在する。昨年、 シュトゥットガルトの空気があまりに悪く、市長が住民に、車を家に置き、代わりに地下鉄や電車、路面電車、バスなど公共の交通機関を利用するよう求めるということがあった。

このような時、アメリカではApple Maps、Bing Maps、あるいはCityMapperなどのベンチャー企業の製品を使って公共交通機関での移動を計画するだろう。しかし残念なことにシュトゥットガルトの住民はそうしたたくさんある技術ソリューションを利用することができなかった。いずれのサービスもシュトゥットガルトはおろかドイツのほとんどの都市で使えないのだ。

なぜか?シュトゥットガルトのVVS公共交通システムが、ベンチャー企業や地図作成会社に公共交通データを公開しないからである――そうした都市は世界中にたくさんある。その結果、シュトゥットガルトの人々は、アメリカでは多くの人が当たり前に使っている経路検索ツールにアクセスすることができない。それが公共交通機関の乗客数の抑制につながり、自家用車のガス排出量を増やし、経済革新を妨げている。

実は情報の公開に関して私はこの問題に直接関わっている。私の勤務先である1776は、公共か民間かを問わず複数の交通手段の最新情報を表示するベンチャー企業TransitScreenに投資している。例えば、ある都市に住んでいて、A地点からB地点へどのように行くか、決めなくてはならない時があるだろう。料金や利便性によって、車で行くかもしれないし、バスや地下鉄に乗ったり、タクシーを使ったり、バイクシェアで自転車を利用したりするかもしれない。こうした決定をさらに複雑にするのは、UberLyft、Bridjのような、公共交通事業者のウェブサイトやアプリとほとんど連携することのない民間輸送業者の出現だ。

一歩引いて、経路検索アプリがどのようにできているのか、どのように次の列車やバスが到着する時刻が分かるのか、考えてみよう。これらのサービスは、公共交通事業者による、時刻表データや列車の位置、到着予測、および事故情報を提供するAPIアプリケーションプログラムインタフェース)に依存している。公共交通事業者は、この情報を、情報を最新に保つデータフィードとともにウェブサイト(例えばこのような)を通じて公開する。バスの乗り換えを調べようとアプリを開いたり、Googleマップを開いたりするたび、APIを利用しているのである。

公共交通事業者がデータを非公開にして儲けた例を見たことがない。

多くの公共交通事業者は、2005年にGoogleオレゴン州ポートランドの地域鉄道サービス、TriMetとの共同事業で生まれたGTFS(General Transit Feed Specification)という標準規格でデータを公開しているため、交通アプリは新しい都市に簡単に広められる。最初にGoogleに話をもちかけたTriMetの従業員であるビビアナ・マッキューは、Google MapsやMapQuestが自家用車での移動の計画を楽にするものの、公共交通にはほとんど役に立たないう不満から行動を起こしたと述べているGoogleはGTFSデータを使用してGoogle Transit(現在はGoogle Mapsの一部)を立ち上げ、4年間で25の交通アプリポートランドで誕生し、それぞれの方法で地域の人々の移動をサポートした。

このようなサードパーティーのツールは、UberやLyftのような民間の交通事業者から共有される情報にも依存している。彼らは自社のAPIの一部を公開したことについては評価できるが、独占要件のせいで広い意味での「競合他社」と同じように彼らのリアルタイムデータにアクセスすることはできない。

ポートランドに続いてすぐに、ベイエリアのBARTやアトランタのMARTAなどの交通事業者もGTFSを採用し、サードパーティーの開発者にデータを公開した。「我々はSFMTAを自分たちでは紹介できないような様々な場所にいる顧客に紹介した。」とサンフランシスコのMTAのティモシー・ムーア氏は述べている

この動きに躊躇した都市もある。ワシントンDCのWMATAは、Googleや交通ベンチャー企業にデータを提供することは、「我々にとってビジネス上の観点から最良の利益にならない」として、当初GTFSへの動きに追従しなかった。ただしWMATAはデータからどのように利益を得るかについて明らかにせず、またそもそも運行スケジュールは公共の情報のため、合法的に利益を得ることができるのかどうかも明らかではなかった。交通推進者や起業家からの圧力により、WMATAは態度を軟化し、最終的にGTFSを受け入れた。

今日、アメリカの地図によれば、事実上すべての交通機関のデータがGTFSとして利用できるようになっている。GTFSは世界中の約800の交通事業者によって使用されている、最も一般的な国際標準なのだ。ノースカロライナ州シャーロットのようにいまだデータを公開していない都市もあるが、GTFSが登場してから11年、データを非公開にすることで利益を上げた交通事業者はただの一例も見ていない。

しかし、交通事業者がデータの公開に抵抗し続けている場所では話は全く違っている。ドイツはその最たる例で、ドイツ国内で現在GTFSを利用している都市は、ベルリン、マンハイム、ウルムのたった3都市である。これ以外の都市では、VDV 452と呼ばれる1980年代に生まれた独自の国内交通データ標準を使用している。しかもVDV 452データへのアクセスには許可を必要とする。シュトゥットガルトのような都市には、交通オープンデータポータルは存在しないのだ。730億ドルの資産を有するGoogleは資金を投入してシュトゥットガルトのデータにアクセスしGoogle Mapsに投入しているが、TransitScreen などその他のサービスは、Apple Mapsですら、そこまでしてデータを得ようとはしない。大気汚染の削減や温暖化対策に取り組むドイツ。経路検索につまずいている場合ではない。

なぜドイツでこのように抵抗が強いのか?交通データを手放すことへの躊躇を研究するある研究者は、多様な品質の交通アプリに門戸を開くよりは、単一の「公式」マッピングツールを提供したいという事業者の思いに言及している(ただしアメリカの例では、市場自体が淘汰・整理にかなりうまく機能する)。最近、ドイツの連邦運輸デジタルインフラ相アレクサンダー・ドブリント氏にこれについて質問する機会があった。ドブリント大臣はドイツの都市がオープンデータにについて遅れていることを認め、潜在的収入を逃してしまう恐れを述べた――7年前にアメリカのいくつかの都市で起こった事である。「データ最小化の原則から離れ、創造的で安全なデータ資産へと移行しなければならない」と大臣は言う。「公共のデータはオープンデータである。」

ドブリント大臣には難題が待ち構えている。最近のある研究も、シュトゥットガルトのリアルタイム経路検索について、政府の運輸協会が提供したアプリを称賛し、GTFS標準を採用して経路検索会社を惹き付けることについては全く触れていなかった。

これは機会の損失である。何年も前にアメリカの都市が学んだように、交通事業者が自分たちのデータを手放さないことは、事業者自身にとっても乗客にとっても害となるのだ。

著者について

David Zipper氏は、現在ワシントンD.C.のスタートアップハブである1776のパートナーであり、スマートシティやモビリティベンチャーへの投資を監督している。これまで、ニューヨーク市マイケル・ブルームバーグ市長のNYCビジネス・ソリューションのディレクターを務めた後、彼はワシントンD.C.の2人の市長のビジネス開発と戦略のディレクターを務めた。

公共交通オープンデータ 能美市の取り組みとその未来

2017年1月21日(土)に、石川県能美(のみ)市を訪問し、能美市が主催する公共交通に関する講演会&アイデアソンにて講演いたしました。能美市では、今年1月に市が運行するコミュニティバス「のみバス」の時刻表データをオープンデータとして公開しました。今回の講演会は、それにちなんだイベントでした。

この記事では、日本における公共交通オープンデータの先進事例であるのみバスの事例を紹介しながら、今後の可能性を考えてゆきます。

石川県能美市

能美市は、石川県の加賀地方、金沢市の西に位置する人口約5万人の町です。2005年に根上(ねあがり)町・寺井(てらい)町・辰口(たつのくち)町が合併して出来ました。市域は白山を源流とする手取川扇状地となっており、江戸時代から九谷焼の産地として知られています。市内には北陸自動車道が通り、北陸先端科学技術大学院大学JAIST)が立地するほか、豊富な伏流水に恵まれていることから、近年は製造業の誘致も積極的に進めています。能美市(旧根上町)出身の著名人として、森喜朗元首相や松井秀喜氏がいます。

「のみバス」とは

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のみバスは、能美市が運営するコミュニティバスです。合併前の各町域を回る3系統の「循環バス」と市域全体を縦断する「連携バス」という大きく4系統が運行されています。運行は加賀白山バスに委託しており、小型バスが1月1日〜3日を除く毎日同じダイヤで走ります。運賃は100円の定額を降車時に支払い、乗り継ぎの際には乗り継ぎ券を発券してもらうことで乗り継ぎ先のバスは無料で乗車出来ます。

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自分の理解のために路線の全体像を図示してみましたが、各系統は、実際にはかなり複雑です。各地区の循環バスは、根上地区にはJR能美根上駅を発着として4方面の循環バスが、寺井地区には2方面の循環バスが、辰口地区には2方面のバスが走っています。連携バスは、東行きが1日16本、西行きが17本走るのですが、各便ごとに違うバス停に停まるのでは?と思ってしまうほどです。図はかなり簡略化しているのですが、実際は更に複雑な経路となっています。連携バスと各地区の循環バスの乗り継ぎ地点として、図に示した4つのバス停が案内されているのですが、路線図をみてみるとこれ以外にも重なっている部分があり、乗り継ぐことが出来そうです。

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ここまで理解したところで、再度Webにあるパンフレットを見るのですが、地名も地形も位置関係も分かっていない部外者にとっては、未だに分かりにくいです。例えば「JRの能美根上駅から九谷焼資料館に行きたい」と思ったとき、どのバスに乗ったら良いでしょうか。そのあと松井秀喜ミュージアムに行くとしたら、どのバスに乗ったらいいでしょうか。本数の少なさも相まって、不安なく移動出来るとはとても言いがたい状況です。もちろん、1つのパンフレットであらゆる人の要求に応えられないのは当然です。この点でも、オープンデータの公開はとても良い選択だと思いました。

公共交通オープンデータ公開の実現

能美市は現在オープンデータ事業を積極的に進めており、アイパブリッシング株式会社の支援のもと、2017年1月にのみバスの時刻表や路線図データをオープンデータとして公開しました。アイパブリッシング株式会社は、Code for Kanazawaの代表を務める福島健一郎氏が経営する金沢にある企業で、スマートフォンアプリの開発のほか、オープンデータに関連する事業も手がけています。公開に当たっては、公共交通データの世界的なデファクトスタンダードであるGTFS形式を採用し、ライセンスとしてCC-BY 4.0を採用しています。現在、能美市オープンデータ事業のWebページからダウンロード出来、出典を示せば、商用も含めて誰でもこのデータを使うことが出来ます。

ここで採用しているGTFS形式とは、2005年にアメリカ合衆国ポートランド市の公共交通事業者TriMetとGoogleとがデータ提供に際して策定したフォーマットであり、駅やバス停、路線や時刻などを複数のCSVファイルに記述したうえで1つのZIPファイルに圧縮したファイル形式です。現在は、世界中の数百の公共交通事業者がGTFS形式で自社のデータをオープンデータとして公開しています。Google MapsやCitymapperをはじめとして公共交通の経路探索が出来るスマホアプリが数多くありますが、多くが、オープンデータとして公開されているデータを収集してサービスを実現しています。

実は日本では、「ジョルダン」「駅すぱあと」などの乗換案内サービスが1990年代後半より時刻表データに対応した経路探索を実現しており、その時からJRのダイヤデータなどが時刻表の出版社によって有償で流通する仕組みが整っています。私鉄やバス事業者のデータも、乗換案内サービス事業者の努力でデータ収集が行われています。このため、鉄道や主要バス路線に関してはオープンデータが活発になる以前から乗換案内サービスで検索出来ていました。しかしこの方式だと、地方のコミュニティバスのような、小規模で乗客が少なく、乗換案内サービス事業者がコストを掛けてデータを収集するには見合わないバス路線はいつまで経っても乗換検索が出来ません。そこで、公共交通事業者が自らのデータをオープンデータとして取り込みやすい形で公開し、乗換案内サービスによる採用を目指す取り組みが活発になってきているのです。

現在、私が関わっているOpenTrans.itを通して、静岡県焼津市島田市コミュニティバスのデータがCC-BY 4.0のGTFS形式で公開されています。また九州産業大学稲永健太郎准教授らによって、福岡県新宮町のコミュニティバス「マリンクス」のデータが整備されています。また山梨県山梨交通富士急行など大手を含めたほぼ全域の路線バスデータが、山梨県バス協会、山梨大学の豊木博泰教授、株式会社YSK e-comらによってオープンデータとして公開されます。乗換案内サービスの側でも、既にGoogleは「Google 乗換案内パートナー プログラム」という形で公共交通事業者によるデータ提供を受け付ける窓口を設け、手続きや必要なフォーマットなどを案内しています。今後、これ以外の乗換案内事業者に関しても、ぜひデータを受け付ける窓口を開設して頂ければと思います。

何が出来るようになったのか?

現在、のみバスのオープンデータはGoogleに採用され、Google Mapsから誰でも検索出来るようになっています。私の実体験を通して、どのような検索が可能になったか例を示したいと思います。

まずは市内で宿泊した「能美市ふるさと交流研修センター さらい」から「九谷焼資料館」へ、朝10時の出発として検索すると次のような検索結果が出てきます。地点から地点への検索なので、九谷焼資料館の最近傍のバス停を通る便でなくても、歩けば目的地にたどり着くことが分かります。

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九谷焼資料館は歴史的な作品や人間国宝による作品などがたくさん展示されていてとても良かったのですが、ここではバスの話を進めます。12時過ぎに今度は松井秀喜ベースボールミュージアムへ向かおうと検索してみます。すると以下のように、2回の乗り継ぎで着くことが分かりました。2つめの乗り継ぎバス停「根上ショッピングタウン」は、のみバスのパンフレットでは特に乗り継ぎバス停として案内されていなかったので、慣れた人でも探すのが難しい経路だと思います。

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しかし結局このルートには乗車しませんでした。雪の降る中で2度もバスを待つこと、到着したバス停「サンタウン南」から更に2km歩く必要があることが理由です。 結局この日は、金沢に向かうことにしました。金沢21世紀美術館を目的地に検索すると、以下のように寺井中央で北鉄バスに乗り換える経路が案内されます。47分も待ち時間があるのですが、地図を確認すると周囲に喫茶店などがあることが分かり、安心してこの経路で金沢に向かいました。

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地域に密着したコミュニティバスは、路線名やバス停名を聞いても場所が想像出来ず、外来者が利用するのは困難でした。また、地域住民の要望もあり経路が入り組んでおり、旅行者にとって便利な路線とは限りません。しかし今回、Google Mapsを通して調べることで、こうした困難を感じることなく、乗換を含めたバス情報を得ることが出来ました。見ず知らずの土地で、全く不安を感じることなくバスを利用出来るのは、個人的にも強烈な体験でした。

これ以外にも、ウィジェットを用いれば現在地付近のバス停のバス出発情報なども得ることが出来ます。この機能などは、バスをよく知る地元の人にとっても便利な機能ではないでしょうか。

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オープンデータを使ったスマホアプリは、特に許可や課金なども要らず誰でも作れます。今回はGoogle Mapsの活用事例でしたが、ぜひこれを越えるバス体験をもたらすアプリが続々登場することを期待しています。

講演会とアイディアソン

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さて、今回能美市を訪問した目的は、能美市にある石川ハイテク交流センターでの公共交通に関する講演会&アイデアソンにおける講演でした。おかげさまで、地域の方を中心に40名近い方がお越しくださり、私の講演を聞いて頂きました。この中では、Google Mapsによるバス検索のデモや公共交通オープンデータの意義などをお話しさせて頂きました。参加者はITに詳しい方ばかりではなく、理解が難しいところがあったかと思いますが、何か伝わるものがあったならば幸いです。

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公共交通オープンデータの話をするときは、「スマホアプリに載せるために公共交通オープンデータを実践しよう」という話をしてしまうことが多いのですが、今回は、市民の方がたくさん来られると言うことだったので、まちづくりの取り組みとして「市民が行政と同じ目線で一緒に公共交通を考える手段の一つとしてオープンデータを実践しよう」という話をしてみました。交通を考えることは、まちづくりを考えることそのものです。ただこのあたりは、まだ私のほうも考察不足、経験不足です。今回のような場を通して、更に勉強せねばならないと感じています。

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私の講演のあとは、5、6名の班に分かれて公共交通について考える「アイディアソン」を行いました。私のグループでは、今は自動車に乗っているが数年内に免許の返納も考えているという市内の70代前後の方3名などと一緒にあるべき公共交通の姿を考えました。日頃接する機会のない年代の方の話をゆっくり伺うのはいいですね。グループの別の方からの、「のみバス体験ツアーをやろう」という提案に、前向きに応じられていたのが印象的でした。私の限られた体験でも、のみバスをうまく使えば意外といろいろなところに自由に行くことが出来ます。まだ車があるうちに公共交通も知っておく努力が、市民の側にも必要ですし、運営する側にもそれを伝える努力が必要だと感じました。

今後への期待

能美市コミュニティバスデータが公開され、Google Mapsに掲載されたことは、近隣の市にとっても刺激になったようです。是非この流れが続いて、この後もデータ公開が続くことを願っています。また、Google以外の乗換案内サービス事業者に関しても、ぜひオープンデータ公開を後押しするメッセージがあればと思っています。

オープンデータを利用したアプリとして、今回はGoogle Mapsを紹介しましたが、もちろん誰でもあたらしいアプリを開発出来ます。能美市には北陸先端科学技術大学院大学JAIST)があり、IT人材も豊富です。ぜひ先進的なデータ環境を舞台に、あたらしいアイディアの詰まったアプリが次々と開発されることを期待しています。

今回のデータ整備の技術的な部分に関しては、アイパブリッシング株式会社の努力がありましたが、今後こうした取り組みが拡がるためには、より簡単にデータ整備が出来るようなツールの充実が必要です。OpenTrans.itでは簡易なWeb入力インタフェースを用意していますが、より洗練されて使いやすいデータ整備ツールが充実することが必要です。

データ整備はいちどですむ取り組みではなく、今後継続的に更新してゆくことこそ重要です。時刻表改正のたびのデータ整備を容易にするためにも、 理想を言えば、いちど整備したデータから、運輸局への届出、バス停へ掲示する時刻表、車内アナウンスや運賃箱向けのデータなどが自動的に出力されるようなワークフローが出来ることが望ましいです。

講演の中でも触れたのですが、オープンデータの公開は単にデータが拡がることでバス利用が便利になるだけでなく、データの公開が、新たにバスサービスを考えるきっかけに繋がります。具体的な例としては、アプリで何件の検索が行われるのか、どこの区間で検索が多いか、何時間も待たせる検索結果が何件出ているかなど、アプリの利用ログデータを集計することで、バス路線を評価し、より良いサービスを検討する際の基礎データが得られたりします。

現状では、まずは乗換案内サービス事業者へデータを提供するまでが目標となっています。しかしその先に、公共交通事業者や乗換案内サービス事業者、市民や自治体などが力を合わせて、より良い移動サービスを構築していく未来があると思っています。そんな未来を実現するために、私も力を尽くしたいと思っています。

IT Offers Opportunities to Public Transport: Have a Clear Vision to Lead the World

Tokyo Kotsu Shimbun Jan 9, 2017: 3. Print.

(Original article is written in Japanese.)

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Six years have passed since I became involved in Japanese public transportation as a researcher of information technology. While route buses in small cities in Japan have been in a very severe situation due to the decrease in public transit ridership in the past several decades, with the recent development of information technology such as smartphones, the automatic vehicle location systems and applications are able to be installed a hundred times or more cheaper than it was in the past. Also, in small cities, you do not have to consider the existing systems and services which might have already been installed in big cities. All these allowed me to study at the cutting edge of technology development. My own interest has also shifted from introducing the systems and services used in the urban areas to the rural areas to improving the efficiency of public transportation using IT and searching for better transportation that is realized with IT.

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The impact of IT on public transportation is not limited to my personal history. There is a big movement around the world that explores new forms of mobility with sharing vehicles utilizing smartphones and cloud computing. This is based on the trend shifting from individual car ownership to mobility services and also the movement aiming toward smart city, where infrastructure including electricity and transportation is highly controlled by information technology, efficient and environment-friendly, and where it is safe and comfortable to live. Public transportation, which had been thought to be obsolete especially in rural areas, is now being re-evaluated with its efficiency and eco-friendliness. Being put in contemporary context, public transportation is now the showcase of the latest technology.

Theodore Levitt, an American economist, says "People don't want to buy a quarter-inch drill, they want a quarter-inch hole." Putting it in practice in the mobility field, "Mobility as a Service" (MaaS) has started from Europe. You can search and compare mobility services such as railroads, buses, car sharing, bicycle sharing as well as to make reservations and payment all at once with a single smartphone application in one stroke. Users want to reach somewhere rather than want to ride on something, so the smartphone application builds and provides services that combine various means of transportation.

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Today, automotive manufacturers all over the world are trying to incorporate public mobility services into their business. There was a big move such as Daimler started car sharing service called car2go in 2008, and in 2016, Ford Motor Corporation being in the process of acquiring Chariot, a commuter shuttle service company in San Francisco city, and Volkswagen Group launched a new mobility services company, MOIA. Investment in ride sharing by automobile companies is also the way to explore new mobility. 2016 was the year when the future image of a private car and the future image of public transportation overlapped for the first time.

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When Japanese bus and taxi operators discuss over new mobility, they tend to regard it as a threat to their business from abroad. In logistics, however, it is Japan that established a world-class high-level service such as courier services and convenience stores. Do not fuss around overseas trends; Japan should have the power to set up a new vision of public transportation that takes the lead in the world. Let’s work together for it.

Masaki Ito

Research associate, Institute of Industrial Science, The University of Tokyo. Received B.A. in Environment and Information Studies in 2002 and Ph.D. in Media and Governance in 2009 both at Keio University. Assistant Professor, Graduate School of Engineering, Tottori University from 2010 to 2013. Current position since 2013. Specialties are ubiquitous computing and spatial information technology. Currently he is interested in information technology and public transportation, and is engaged in developing smartphone apps for advanced mobility, analysis of big data in public transportation, and promotion of open data.

Uber雑感

SIGSPATIAL参加のためにサンフランシスコ出張。10月30日に到着して、11月4日に発つ5泊の間に、4回Uberを利用。やっぱりアプリの出来はとても良く出来てて、ITサービスとしての完成度の高さはさすが。このクオリティのシステムを作るにはそれなりのITエンジニアがそれなりの人数、期間をちゃんと思いを持って携わっていないと出来ないはずで、こういうのはシステムを外注してたり経営層にITへの理解がない事業者からは中々出てこない。ITエンジニアの転職が多くて、良いものとは何か、どう作るかという感覚や考え方が広く共有されてることも背景だと思う。なお、滞在中に大きなアップデートがあり操作方法が変わって戸惑った。ちゃんとスクリーンショットを撮っておけば良かった。

 

とにかく外国人にとって嬉しいのは、近所の雑貨屋にすら治安や歩道の整備不足とかで行きづらいアメリカで、Uberの登場で初めて移動の自由を得たこと。呼べばどこにでもすぐ来るし、タクシーと思えばそれほど高くない料金でどこにでも行ける。車を持っていない旅行者が感じる移動の絶望的な不自由さが、この数年で一気に解消した感覚がある。アメリカ人にとっても近い感覚はあるんだろうな。

 

こういう感覚は、公共交通機関が発達したヨーロッパの街ではほとんど感じなかったし、流しのタクシーがすぐ捕まる中国の都市でも感じなかった。日本に来た外国人は果たしてどう感じてるんだろうか。

 

1回、かなり近距離をお願いした時にアプリの操作で迎えに来る車が割り当てられたのに、その車が中々こっちにこなくて周りをウロウロしてた事があった。結局キャンセルしたんだけど、おそらく乗車拒否をされたような気がする。

 

ドライバーが、1人は移民、あとは多分アメリカ人、1人は耳が聞こえない方のようだった。ちゃんと稼げてるんだろうか、みたいな話は出来なかった。1人は、ゴールデンゲートブリッジに向かう途中で観光案内的なこともしてくれてありがたかった。

 

ドライバーを評価する仕組みは、生活がかかっているのが分かるのでこっちも緊張するね。日本の感覚だと中々満点って付けにくいけど、特に瑕疵がなかったら満点なんだよね。ということで今回も皆五つ星。あと、その人にあった評価軸の定型文からコメントを選べるようになってたのが面白かった。「観光ガイドがとても良かった」みたいな。

 

よく問題になる安全性に関しては、正直よくわからない。運転や地元の道に慣れてる人の運転という感じで、不安は感じなかった。これが仮に日本人同士で、自分もよく知ってる道だったらどう感じるんだろうか。女子学生には1人で乗るのはやめた方がいいと言ったけど、他の手段よりは実際のところ安全かもしれない。まあ、そもそもアメリカで夜1人で出歩くもんじゃない。

 

サンフランシスコにはUberAirbnbの本社があるので、余計にこの町の風土に合うのかもしれない。

 

個人的にもう一つ欲しいと思った交通に革新をもたらすアプリは、「モーゼ」というやつで、信号や歩道が十分整備されてないアメリカの街で、ボタンを押すと車が止まってくれて歩いて横断できるようになるアプリ。誰か作ってくれないかな。

State of the Map Japan 2016 発表資料(勝手リンク集)

2016年8月6日(土)に赤羽会館にて開催されたOpenStreetMapのカンファレンス State of the Map Japan 2016 で発表された資料のうち、公開されたものに関してリンク集を作成しました。抜けがあったらご連絡下さい。 会場の雰囲気はこちらのTogetterで。

togetter.com

基調講演

www.slideshare.net

講演(午前)

  • 「今の情報」がOpenStreetMapの可能性を広げる。 業務・ビジネスの支援システムへの応用
    • 相川 哲盛 (株式会社日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 CIS本部 スマートモビリティ開発部 部長)

スロットグループA

  • こんなところにOSM

    • loglogy
  • 避難所支援システムにおけるOpenStreetMapの利用

    • 山下 幸祐

speakerdeck.com

  • 地図と構内図と公共交通が融合する未来について
    • 川島 和澄

スロットグループB

  • OSMのデータ取り込みツール、ライブラリの解説
    • 松澤 太郎 (@smellman)

speakerdeck.com

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  • 刷新された CARTO で OSM データを活かす

講演(午後)

speakerdeck.com

スロットグループC

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  • OSM Fukushima 3D城郭建立記

    • 目黒 純
  • 山下 康成

    • 京都は攻めている!

スロットグループD

  • Mapillary – Photos and Data to Improve your OSM Editing

    • Mapillary (飯田哲による代読)
  • Mapillaryは何ができ何を残せるのか

    • 宮森 達弘
  • 地域課題解決型位置情報ビジネス

    • 林竜彦(株式会社デザイニウム)

スロットグループE

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スロットグループF

  • グラフィックコンテンツとしてのOSM-PBMap

    • 村松 和善(東京カートグラフィック株式会社 営業部 課長)
  • OSM:人のつながり、時間の重なり

    • ikiya

ライトニングトーク

  • 日本版 tracktype=grade1 or highway=unclassified

www.slideshare.net

  • Garmin地図データ作成の苦労

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「交通ジオメディアサミット 〜 IT×公共交通 2020年とその先の未来を考える〜」発表資料と反応

「交通ジオメディアサミット 〜 IT×公共交通 2020年とその先の未来を考える〜」で発表された資料をまとめてゆきます。(資料が公開され次第追加してゆきます)

  • 日時: 2016年2月12日
  • 場所: 東京大学 駒場第2キャンパス コンベンションホール

geomediasummit.doorkeeper.jp

発表資料

それぞれのスライドは、リンクを辿ることで、配布元からpdfをダウンロード出来ます。

第1部 趣旨説明と概論

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  • 国土交通省の公共交通政策とITの活用
    • 吉木務 (国土交通省 総合政策局 公共交通政策部 交通計画課 地域振興室長)

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第2部 都市と地方の公共交通

  • JR東日本におけるスマートフォン向け情報提供サービスの研究開発 ~リアルタイム列車位置情報、駅構内ナビゲーションシステム、公共交通連携~
  • 地方公共交通再生に向けた3つの見える化

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  • (飛び入り)日本最低のバスロケーションシステムとバスダイヤ編成支援システム
    • 高野孝一 (スジヤシステムズ 代表)

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第3部 コンテンツプロバイダから見る公共交通

  • 誰もが使う「乗換案内」というツールと“バス検索の歩み”と未来像。

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  • 駅すぱあと」における路線バスデータの現状と、公共交通データがオープン化された未来について
    • 諸星賢治 (株式会社ヴァル研究所 コンテンツ開発部 バス制作チーム)

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第4部 公共交通を支えるコミュニティ

  • オープンなコミュニティによる地域課題解決

speakerdeck.com

  • (飛び入り)「地域のバス情報をオープンデータ化し世界に発信するOpenTrans.itの紹介」

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  • 「バス停検索」の開発・運用とそこに集う公共交通データ整備コミュニティについて

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  • 路線図ドットコムが挑み続けた公共交通データの収集と整備の19年

www.slideshare.net

ディスカッション「これからの公共交通データのエコシステム」

www.slideshare.net

反応

togetter.com

Yoshitaka Naganoさんによるまとめ github.com

ちずらぼさんによるまとめと感想 plaza.rakuten.co.jp

鳴海行人さんの感想 交通ジオメディアサミット #gms2016 に参加した

チミンモラスイ! : 「交通ジオメディアサミット」参加!

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OpenStreetMap勉強会 バス停編に参加した

 2月6日(日)に開催された「OpenStreetMap勉強会 バス停編」というイベントに参加してきました。場所は高円寺にあるヴァル研究所です。駅すぱあとを開発している会社です。OpenStreetMapOSM)とは、Wikipediaのようにボランティアのユーザが少しずつデータを登録して出来る地図で、ODbLというライセンスに基づいて自由にデータが利用出来るのが特徴です。世界中で活動がされていますが、日本でもコミュニティ活動が盛んで、しばしば、マッピングパーティーというイベントを開いています。普通マッピングパーティーというのは、OSMの愛好者(マッパーと呼ぶ)や興味のある人が集まり、あるエリアを調べてその後にデータを入力する、というような半分アウトドアなイベントが多いと思うのですが、今回は、屋内メインのイベントで、予め知っているバス停やバス路線を入力しようという会でした。

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プログラム

会の進行はこんな感じでした。記憶で補っているので間違ってたらごめんなさい。。

10:30 開場
10:35 簡単な開会宣言(林さん
10:40-11:00 ヴァル研究所:会場説明とOSMを使った取り組みを紹介
11:00-11: 15参加者自己紹介
11:20-11:30 「OSMとは・・・」 (斉藤さん
11:30 「バス停の入力方法」(林さん)

<<実習1>> バス停の入力。

12:00-13:30 <<昼食>>
13:30 「バス路線の入力方法」 (キムさん

13:45
<<実習2>> スライドでバスルートの編集方法を説明しながら各自でバスルートを編集する。
 ・バス停のタグ付
 ・バスルートのタグ付 & 経路 & etc
16:00
成果発表・LT

17:30 
懇親会(九州料理 マルキュウ - 高円寺/郷土料理(その他) [食べログ]

内容

 林さん、キムさんからOSMへのバス停、バス路線のデータ入力方法を教えて頂き、参加者がJOSMを使ってそれを実践してデータ入力するという会でした。OSMへのバス停やバス路線の入力は、あまり直感的でなかったりリレーションを理解していないと出来なかったりで、OSMへのデータ入力の中でも、高度な技術のようでした。今回も使った、キムさんのこのスライドが今もいい資料のようです。

バス停の入力

 バス停の位置とは、バスが止まる路上の位置を差すのでしょうか、バスのポールがある位置を差すのでしょうか。2011年以降、OSMではこのふたつを別のものとして入力します。上のスライドの32ページが詳しいのですが、ポールの位置には「プラットフォーム」を表すタグを入力します。駅のホームなどに対するタグなので、直感的ではないと思ったのですが、「乗り物を待つ場所」と言う意味で共通するのだそうです。一方、バスが止まる位置は車道の上に表現できます。他にも、バスベイという、バスが停車するために車道が膨らんでいるような構造も、表現できるそうです。

バス路線の入力

 バス路線は、新しくWayを入力するのではなく、道路を表すWayを並べた「リレーション」として表現します。このリレーションには、停車(通過)する全てのバス停も含みます。上下路線や、同じ名称の路線でも停車バス停が微妙に違う場合は、別のリレーションになります。そして、これらをまとめるリレーションのリレーションが必要になります。

 リレーションにおいては、順番が大事です。Wayが接続されるように、正しく並べる必要があります。行って戻るような路線の場合、2回通る部分のWayは2度並べる必要があります。正しく入力できている場合、バス路線の始点から終点まで、切れ目なくWayが繋がるようになります。(JSOMで簡単にチェックできます)

 バス停も、同じく始点から終点まで順番に並べてゆきます。上下でポールが分かれているならば、上下線のリレーションは、名称は同じ別のポールを含むことになります。この時、ポール位置だけを含めばいいのか、停車位置も含むべきかなどは厳密には決まっていないようでした。(実際には、停車位置の情報はほとんど無いのかもしれない)

 詳しくは、飯田さんのこのドキュメントが参考になります。

実習

 家の近くのバス停や普段利用するバス路線など、よく知っているバス情報を入力する実習を行いました。マッピングパーティーとして皆で調査に行けたら楽しかったと思うのですが、同じバス路線を全員で調べても入力が重複するだけなので仕方ないのかも知れません。私の場合、自宅近くのバス停やバス路線はほとんど入力が終わっていたので、いくつかバス路線が途切れている点を探し、それを直す方法を教えて頂きました。

感想

 OpenStreetMapのコミュニティも、「バスマップサミット」などを開催しているバスマップのコミュニティも、どちらも活発に活動しているのですが、これまでほとんど交流がありませんでした。今回の勉強会は、ふたつのコミュニティがバス停、バス路線データという切り口で初めて交流した、歴史的な意義のあるイベントだったと思います。企画された林さん、佐野さん、会場を準備された諸星さんほか、参加された皆様おつかれさまでした。たまたまふたつのコミュニティに顔を出していた自分にとっても、とてもうれしい企画でした。

 OSMでも特にバス路線を描いている林さん、キムさんから直接手ほどきを受けられる場であり、更に、バスマップのコミュニティにおいても、rosenzu.comとして長年バス停、バス路線、ダイヤデータの整備を行い、運輸局や乗換案内などに提供している伊藤浩之さん、万単位のバス停データを自分の足で調査されている佐野さんなど、そうそうたるメンバーが揃い、大げさではなく、バスデータに関しては日本の英知が揃う場だったと思います。こうした方が揃い、データ仕様などについて議論するのを伺うのは、それだけで鳥肌が立つような思いでした。

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 一方で、これは悪いことではないと思うのですが、OSMの視点と、バスマップの視点と、似たようなことをやっているように見えても、やはり簡単に重なるわけではないということも明らかになったと思います。伊藤浩之さんが「自分のやっていることは地図を作ることではなく、出来た地図に色を塗るような仕事だ」というようなことを仰っていたのですが、バスサービス側に視点を持つと、バス停や路線はいくらでも変わりうるものであり、道路を走る車や人を地図に載せないように、地図という静的なデータベースの一要素にバス停・バス路線が載るのは不思議な感覚があるのかもしれません。静的な構造物と捉えモデル化しようとするOSMの視点と、重ならないものを感じました。(ランドマークとしてのバス停の意味を否定している訳ではないのですが、バスサービス側に視点があると、それは副次的な意味に感じるかも知れません)

 ソフトウェアにおいても、JOSMでの編集は、機能が豊富で汎用性は高いものの、バス路線の編集に特化しているわけではなく、入力のしがたさは否めなかったと思います。簡単に道をなぞったらバス路線が引け、道路の変更に対してうまくやってくれて、バス路線の変更も簡単なバス路線エディタがあったらいいな、と考えてしまいました。

 また、既に大量のバス停データを持っていても、簡単にはOSMへはインポートできないという感覚も持ちました。データの形式変換やMLでの議論のような手続き的な話だけでなく、モデル化の部分に立ち戻ってOSMの「作法」を考慮していないと、データの調整が意外と必要で、一つ一つのバス停をOSM地図上でしっかり見直さないといけないような予感もしました。(これはもう少し具体的にやってみないと分からないのですが)

 このような、細かい技術的課題はまだいろいろな試行錯誤が必要な段階だと思うのですが、しかし、「バス」というテーマでこれだけ熱心な勉強会が開催され、懇親会も非常に濃く熱い話が尽きないという、そんな状況を、とてもうれしく思い、また勇気づけられました。道路や建物というハードウェアに対して、鉄道、バスのような交通は、都市のソフトウェア的な部分で、この部分の豊かさが大事であると多くの人が気付いているのだと思っています。私自身も、鳥取で「バスネット」に関わっているときに、OSMのデータを利用してバス路線図を作成するような試みを学生と行っておりました。十分な成果は出せなかったのですが、乗換案内のようなサービスの高度化を考えたときにも、地図とのより深い連携は重要な課題だと思っております。

 来週に迫った「交通ジオメディアサミット 〜 IT×公共交通 2020年とその先の未来を考える〜」に対しても、とてもいい課題を頂けたと思います。まだしばらく、公共交通とデータ整備について考えていきたいと思います。